大五郎の悲哀

昨日は、大いに反省することが……。
われらが一子大五郎(仮名)を抱えて、書斎からでてきた夫が言うのです。
「偶然だと思うけど、仕事をしていたら大五郎が入ってきて。何しにきたんだって言ったら、『じゃま?』って聞いた。びっくりした……」
大五郎は、言葉があんまり早くなく、でんちゃ〜あいちゅ〜ばなな〜たいたい〜じゅちゅ〜わんわん〜くらいでして。
いままで、会話らしい会話をしたことがなかったのですが(大方は大五郎語をしゃべっているので)。
それが。


「何しにきたんだ?」
「じゃま?」


……って。
それって……。
はたと、思い至りました。
「……私のせいかも〜。今、ゲラの見直しにかかってるんだけど、ここのところ、大五郎がゲラで遊びたがって、上に乗っかったり、しまいには落書きまでされたりするんで、『邪魔! 邪魔!』って言いながら、怒ってどかしてばっかりいたから……」
「何で邪魔にするんだよ。かわいそうだろ」
「いや、単に作業中のゲラの上に乗られたりして、困ってただけだよ〜。でも、本当に『じゃま』って言ったの?」
すると、大五郎は私たちの言葉を聞き、満面の笑顔で小首をかしげ。
「じゃま? じゃま?」
……その姿があまりにも哀れで、涙ぐみながら「邪魔じゃないよ〜」「邪魔じゃないよ〜」と言いつつ、交互に抱っこする親バカたち……。
しかし。
これ以降。
大五郎は、「じゃま?」と聞くと、親がなでなでして抱っこしてくれることを学習してしまったらしく。
ことあるごとに、「じゃま? じゃま?」と言いながら、笑顔で寄ってくるようになってしまいました……。
嗚呼。
ともばたらき家庭の幼児の悲哀が……。